視力の低下とカメラに使える予算のことを考えると、ライカMシリーズから別のシステムに乗り換える日が来るかもしれない。特に視力の衰えは切実にシステムの変更を迫って来ている。Mのレンジファインダーはただのガラス越しに風景を見ながらフレーム内に被写体を入れて、ピントを合わせるようなもので、f値の小さいレンズの開放付近での撮影は難しい。オートフォーカスも無いし、ピントを合わせたい部分を拡大して見られるわけでもないから。EVFを使えば拡大できるけど、M240でそれを使うとシャッターを切る際のカメラの反応が驚くほど遅い。静止しているものを撮るのなら良いけれど、人を撮ろうとするとタイミングがずれて素敵な表情を撮り逃すことが多々ある。
その点で言えば、SONY α7シリーズに限らず、いわゆるミラーレス一眼機であれば、拡大しながらピント合わせをすることも簡単だし、今持っているレンズをマウントアダプター経由で使うこともできるし、言うことなしなのだ。メーカーや機種の違いで色の好みが分かれるという話題もよく耳にするけれど、モノクロに仕上げることが多く、これまでもあまりカラーを使ってこなかった僕にとってはそこはあまり大きな問題では無いのかもしれないし。
それでもなかなかシステム変更に踏み切れない理由がある。
写真が変わってしまうのかもしれない、という漠然とした悩みがその理由だ。
僕がM240を使い始めた頃、自分でも理由はわからないまま、写真が変わった。撮った写真をMacの画面で見た時に「あ、欲しかったのはこの感じだ。」と一人ニコニコしていたことがよくあった。
そういう経験をしているので、今後Mを離れた時、また自分が気づかないうちに写真が変わってしまうかもしれないという不安がある。そしてその場合、自分が望まない方向に変わるのだとも思う。
さて、4月にたまたまポートレイトを頼まれることがあったので、視力の不安を解消する意味でも、Leica M240の他にサブ機としてSONY α7iiiを借りて持って行った。メインのM240にはメインレンズのNoctilux 50mmをつけて、α7iiiにはマウントアダプタ経由でNokton classic 35mmをつけた。結論から言えば、現場ではほとんどの写真をやはりM240で撮った。もしもα7iiiの感触が良ければ、途中でレンズを付け替えることも想定していたのだけれど。(その理由を書くと長くなるので、また別の機会に書こうと思う。)ただ結果として、まだまだMシステムから離れられないなぁというのがその日感じたことだった。
それから1ヶ月ほど経った今、改めてα7iiiで撮った写真を眺めている。撮る際の感覚などは別として、写真だけを見れば感じることも違うかもしれない。そもそもNoctiluxをつけて撮ったMの写真と比べることがフェアでないので、今回は比べることはせず、α7iiiで撮った写真だけを眺めている。その中から、いつもと同じ感覚で良いと感じられるものを選んで、モノクロにしてみようと思う。
今ゆっくり写真を見てみると、意外にもそれほど違和感はない。少なくとも選んだものを見る限り、カメラを変えても写真が変わってしまうということはないように思えた。全体的に見ると、ピントがあまい写真が思っていたより多かったことはあるけれど。(ピントをマニュアルで撮るにしても、拡大して視ることでピントの打率は上がると思ったけれど、期待したほどではなかった。)これなら乗り換えも不可能では無いかもしれない。α7シリーズの最新のものは高価だけれど、α7iiiのように少し前の機種なら価格も抑えられるし、スペックについてはMに比べれば十分すぎるくらいだろうし。
そんな訳で、ここにアップした写真はライカではなくα7iiiで撮ったものです。
どうでしょう。言わなければ分からないかもしれません。もちろん撮影日当日にMの方を選んで使ったように、撮影時の感覚の違いについては考えなくてはいけませんし、ライカのレンズが重要であることには変わりないのですが、ボディについては少し柔軟に考えてみても良いのかもなぁ、なんて思い始めています。
※新品で25万円程度、中古なら15万円程度でしょうか。もちろん他のα7シリーズ機も含めれば、価格やスペック次第で選択肢は色々ですね。
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