「ファインダー越しの親密さ」──僕がカメラを好きになった理由

M240 / Hektor 73mm f1.9

写真を撮る人を撮るのが、昔から好きだ。
カメラを構えているだけでも、絵になる。そんな姿を見ると、ついシャッターを切りたくなる。

自分がこんなに写真に夢中になるずっと前から、カメラという存在が出てくる作品が好きだった。
たとえば、市川拓司さんの小説『恋愛寫眞 もうひとつの物語』。のちに映画『ただ、君を愛してる』にもなった作品だ。
あるいは、フリッパーズ・ギターの「Camera! Camera! Camera!」。
ほかにも、今は思い出せないだけで、たくさんあると思う。

カメラのファインダーを覗くその瞬間、被写体と撮影者の関係が一気に縮まるような気がしていた。
若い頃は、そんな親密さを持った恋に、憧れがあったのかもしれない。
そういえば、宮崎あおいさんが出演していたオリンパスPENのCMも、好きだった。
チャラチャラしていなくて、流行に流されず、自分の世界を大切にしているような女の子。
カメラ越しにこちらを見つめてくる、そんな雰囲気をCM越しに勝手に感じていた。

バカみたいだけれど、カメラを持ってる女の子が身近にいたら、きっと好きになってしまっていただろう。
実際にはそんな出会いはなかったけれど。

そんな僕が本格的に写真を撮るようになったのは、息子の高校野球部で写真係を引き受けてから。
でも、実はそのずっと前から、カメラに惹かれていたのかもしれない。
撮る側になる前に、「撮っている人を見る側」だったのだ。

いま、僕がいちばんシャッターを切る相手は、奥さんである。
それはとても自然なことだと思う。たとえあまり喋らないときでも、ファインダー越しに何かを交わしている気がする。
ただ残念なことに、彼女はカメラを持たない。
スマホくらいがちょうど良いらしい。

いつか、彼女がフィルムカメラでも手に取ってくれたら──
きっと、そのときは僕の方がレンズ越しに照れてしまうかもしれないけど。

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