小津安二郎監督の映画から学んだ、写真の構図を変える魔法

海 夕景 ローアングル
『晩春』を観てローアングルを意識して撮影した一枚。いつもより水平線を下げることで、画面に広がりが生まれた(鎌倉にて)

写真展の準備に行き詰まっていた僕は、何かきっかけが欲しくて小津安二郎監督の映画「晩春」を観ました。それは、ある方が小津安二郎のお話をされているのを聞いたのがきっかけでした。写真展の全体像を決めるテーマを探すヒントになるかなぁ、なんて気持ちで観たのですが、物語の内容の前にまず飛び込んできたのはローアングルの多さ。おそらくカメラは低い位置にあり、ほぼ地面と水平、やや上向きかも、くらいの感じがずっと続いていました。そのおかげで、映画にはフレーム効果のためか日本家屋の特徴である襖や柱がよく登場するのですが、それが歪まないのです。僕が勉強不足なだけで、皆さんはそんなことは当たり前のように知っているかも知れないけれど、僕にはインパクト絶大でした。映画中、それは徹底していて、本当に目から鱗でした。実は昨年テレビで放送されたドラマでとても好きなものがあったのですが、そのドラマで唯一気になったのが、おそらく意図してのことだとは思うのですが、手持ちのカメラが自由に動き回るように室内の登場人物を近くで捉えるため、自分も同じ空間にいるような親近感を得られるのですが、一方でしばしば木の柱など垂直なものが大きく歪むのです。僕の写真にもそれが多く、気にしていたので、余計に目についてしまったのです。

僕はと言えば、奥行きを出したくて、むしろわざと少し上から撮ることが多かったのです。加えて、なんとなく女性の顔を撮る時に少しだけ上から撮った方が綺麗に写ると思い込んでいるところがありまして、そのようにすることが多かったのです。下から撮ると、顎が強調されちゃって、本物の方が綺麗だよなぁと感じることが多かったという経験に基づいています。

でも映画の中の映像を見ていると、俳優さん達はもちろん魅力的に見えますし、ちゃんと奥行きも感じられるのです。上から撮るよりも余計なものが入り込まないで、画面がスッキリしているようにも感じました。それに引き換え、僕の写真はごちゃごちゃしているところがあって、ずっとなんとかしたいと思っているのです。最近お借りして使っている75mmのレンズも、使いたい理由の一つは、50mmよりも写る範囲を狭くして、画面内に無駄なものが入りづらくしたかったからです。

そんなことを考えながら、試してみたのが上の写真です。いつもだったら立った姿勢で撮るので、水平線は大抵は被写体の上にあるのですが、しゃがんで片膝をついて撮ってみた結果です。水平線の位置がグッと下がって、あ、いつもと違う!と感じて、ちょっと嬉しくなりました。(僕にとっては新しい発見でしたが、こういう撮り方を試したことはありますか?)

『晩春』を観てローアングルを試してみたことで、いつもとは違う広がりやスッキリした印象の写真が撮れることに気づきました。もちろん、これからは状況に合わせて色々な構図を試していきたいと思っていますが、今回の発見は、今後の僕の写真表現の幅を広げてくれる良いきっかけになりそうです。写真を撮っていて、僕と同じように、なんとなく画面が整理されていないと思う方はお試しになってはいかがでしょうか。

みなさんは画面を整理するために工夫していることはありますか?例えば、構図で意識していることがあれば、ぜひ教えてください。

海 夕景
こちらがいつもの撮り方。いつもの立った姿勢で撮影した写真。水平線が人物よりも上にあり、足元の砂浜が広く写っています。これはこれで安定感のある構図ですが、画面全体を見ると少しごちゃごちゃした印象を受けるかもしれません。

©︎All rights reserved.

コメント

タイトルとURLをコピーしました